Summary-Nepal

IGPCのホームページをご覧いただきありがとうございます。
理事の山本嘉昭です。私は、もう孫がいる高齢の産婦人科医師ですが、マザーテレサのコルコタ施設でのボランティアをきっかけに、国境なき医師団では南スーダンで、紛争地での医療を学ぶ機会に恵まれ、2012年からネパール人のNGOであるHDCS (Human development and community service) で日本人ボランティア医師として協力して来ました。

ネパールはアジアで最も貧困な国(GDPベース )ですが、アフリカ大陸に比べるとまだ良い方です。しかし、国内での地域差は非常に大きく、私が9回通って来たルクム群チョウジャリ村は、開発の遅れた中西部にあり、電気も水道も舗装道路も無く、子供達も簡単な病気で死んでしまいます。チョウジャリ病院はアメリカのキリスト教徒医師が始めた病院で、約40万人の人口を持つ地域で唯一の病院でした。しかしながら、民主化の戦乱のため活動を続けられなくなった外国人スタッフは母国に帰り、その後ネパール人スタッフが引き継ぎました。現在では5名の常勤医師により、年間の外来は41,500人、救急患者4,150人、100床の病棟、5,380人の入院患者、834分娩、2,200件の手術、11万件の超音波検査、10万件の検査室の検査を行い、周囲の55か所の村で公衆衛生活動を行い、教育活動、マイクロクレジット活動まで行うほど発展して来ています。

私が訪れた時期は、医師は研修医が2人しかおらず、その他の医療者40名ほどと協力して50床の病院を運営していました。私以外にも、数名の外国人医師や、その他の職種の方の協力と現地のスタッフの地道な努力、海外からの献金で支えられて来ました。私は毎年2~4ヶ月滞在していますが、心がけて来たのは、「患者の人権、権利の尊重を守ることを身をもって手本で示すこと」でした。超音波検査の基礎を医師だけで無く技師にも教え、カルテの字を読めるように書くこと、検査の精度を保つ事、早産の予防、安全な帝王切開術を出来るようにする事、医療品の計画的な確保、医療者の休息の取り方、日本食を紹介など色々なことに関わって来ました。しかし、私が教えたことよりも、逆にネパールの若い人から教えてもらうことの方が多かったと思います。また、2015年にネパールの地震があり、復興支援にも携わり、インドの国境封鎖による経済危機、憲法制定から健康保険の開始までを見る機会に恵まれました。

地域の人々から、人として生きるために大切な愛情、苦労、貧しさから抜け出せない人間関係、教育の重要性など学ぶことがたくさんありました。中でも、各個人の短期、長期の目標をしっかり持って計画的に進むことがとても大事なこととして、HDCS の皆さんと共有して来ました。

HDCS はキリスト教の信仰を基盤とする団体ですし、神の愛を分かち合うことを一番の目的にしています。どんなNGOでも、最初は理念を掲げて進みますが、寄付をいただく支援者の方々にも数字を見てもらわなくてはならず、ついつい成果を数字で出したくなります。上記の数字もHDCS がまとめた数字ですが、今年帰って来る前に、チョウジャリ病院のスタッフに私がお願いしたのは、「神様の愛から離れて、データーの数字ばかりを追いかけないで欲しい」と言うことでした。

IGPC は、今年の7月に立ち上がった小さなNGOですが、私たちの小さな力を生かせる場所で、本当に困っている人のところへ、私たちも学べる人達と共に、支援してくださる皆様の心を届けられるよう進めて行きたいと思います。

皆様のご支援をお願い申し上げます。

  • チョウジャリ病院スタッフ

  • 新生児への点滴投与

  • 吸う力の弱赤ちゃんへのスプーンでミルク哺乳

  • 出張、妊婦健診の様子

  • 村の子供たちが水汲みをしている様子

  • ネパール地震時の仮設住宅での訪問診療

  • Dr. YOSHIAKI Yamamoto / Tohoku University hospital